今となってはかなり昔のことになってしまったのが、アマースト大学では結構ニュースになったので、遅ればせながら報告したいことがある。
10月末ごろ、フェイスブックのニュースフィードで、たくさんの生徒がシェアした衝撃の写真がある。
お分かりだろうか。
様々な頭蓋骨と脳のサイズを比較し、白人の知的レベルは黒人や先住民族のそれよりも高いこと、そして、その差異は生物学的な違いによるものであることを主張したポスターである。多くの人がキャンパスを出入りするファミリーウィークエンド(在校生の家族がキャンパスを訪問する年に一回ある週末のイベント)の直後に発見されたので、アマースト大学の学生が掲示したわけではおそらくないだろう、と学生たちには理解されている。
何年も前に「科学的に根拠がない」と結論付けられたことをこんな風に蒸し返す人がいるのか、とあきれた意見が多かったが、やはり人種的マイノリティへのインパクトは大きかったみたいである。
同じ授業を取っているアフリカンアメリカンの学生は、怒りと悲しみの入り混じった表情で、「まだこんなことを本気で信じている人がいる社会に出ていくのは怖い」と話していた。
筆者としては、、、
このポスター事件が起きた当時は、アホなことしたやつがいるもんだ、くらいの感想しか持たなかった。なぜなら、このポスターに書いてあるような内容を支持したり容認したりするような人間はほんの一握りの人種差別主義者だけだ、と想像していたからだ。しかし、以前より人種差別的発言を繰り返していたトランプ氏が大統領選挙で当選してから、じわじわと不快感と恐怖が沸き上がってきた。アメリカ国民はトランプ氏を当選させてしまった、つまり半分くらいの国民は、このような言説を積極的に支持はしないまでも、容認する、という現実が露呈したからである。
トランプ支持者は、皆が皆racist(人種差別主義者)、sexist(性差別主義者)、homophobe(同性愛嫌い)ではない、と主張する人も大勢いる。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。よっぽど詳細な調査が行われない限り、その真偽はわからないだろう。
しかし、一つだけはっきりしているのは、これらの人たちは、このような差別主義的言説を、それ以外の要素(リーダーシップ、政治的カリスマ、管理能力など)がどれほど優れていても投票をやめさせるような、絶対的に抵抗しなればいけない不正義、という風には理解していないということである。
だからといってトランプに投票した人を単純に非難する気にもなれない。誰だって、愛だの正義だのという議論は、自分の生活が保障されてから初めてできるものだと思うし、トランプ氏に投票したいと思わせてしまったクリントン氏やそれまでの政権の政策の失敗というのも考慮に入れなければならないからである。
まあでも、とりあえず、いい気分はしない。というのが筆者の感想である。いい気分はしないし、トランプ氏の当選(そしてもうあと数日で就任!!)によって、なんだかリアル感が増してしまって、冷たい汗が背筋を流れるような感覚である。
現在冬期休暇で一時帰国している私がアマーストに戻るころには、米国大統領はオバマ氏からトランプ氏に変わっている。それに対するアマースト大学の学生たちの反応なども、今後報告していきたいと考えている。
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