ブラックパンサーといっても、
ではなく、マーベル映画の
こちらですね。
もうアメリカでは大ブームで、公開から二週間で700億円の売り上げ。期待感もかなり高かったけど、実際に観た人の満足度も高かったみたい。普段映画館行かない私ですが、これくらいは観ようと思い、行ってきました。
ざっくり言えば、アフリカ大陸にあるワカンダという架空の国を舞台に、アメリカに置き去りにされた現国王の従弟と、国王との戦いを描いた映画ですが、何をめぐっての戦いかと言えば、もちろんプライドとか恨みとか国王の座とかいろいろあるんだけど、ワカンダが世界中に秘密にし守ってきたレアメタルなのです。このレアメタルは、すごく頑丈で適応性も高い他に例を見ない金属なのですが、これをワカンダの国富として守りたい国王と、アメリカやヨーロッパで黒人差別に立ち向かう人々へ武器として輸出しようとする従弟が思い切りぶつかるわけです。まあ、このレアメタル輸出はむしろ後付けの理由で、単に自分をアメリカに置き去りにして差別や貧困を味わわせた「本家」への報復がメインだ、という人もいるかもしれないけれど、私個人的にはどちらでもいいかな、という感じです。
むしろ、とても興味深く観たのは、映画のところどころに現在のアフリカ大陸やアフリカンディアスポラ(奴隷として西洋諸国に連れて来られた黒人の末裔)が抱える問題を、時にはコミカルに取り入れていたこと。たとえば、映画の中で戦いの焦点になったレアメタルの問題は、シエラレオネや南アフリカがダイアモンドによって血みどろの戦いに巻き込まれたことを完全に想定しています。実際の歴史では、ヨーロッパ人がダイアモンドを発見してからというもの、大変な利権領土争いや児童労働、内紛につながったけど、もし現地の人々が自分たちで発見していたなら歴史はどう変わっていたのだろうか、と考えたり。
あとは、アフリカ人とディアスポラの微妙なアイデンティティの問題。例えば、アフリカに住む人は、国によってはひどい搾取や内戦に苦しんだ(でいる)かもしれないけど、アメリカであったような構造的な人種差別、集団リンチ、二等市民扱いは受けたことがない。vice versa. この前ケニア人のアマースト生と話していた時に、「アメリカに来るまで自分が黒人だって意識したことなかった」というようなことを言っていた。あと、ナイジェリア出身のゴスペルクワイアのメンバーが、「ゴスペルって黒人奴隷として連れて来られた人の音楽でしょ?もちろん神様を賛美する気持ちは普遍的だから良いっちゃ良いんだけど、私の先祖は幸運なことに奴隷業者に捕まらなかったからさ、、、アフリカンアメリカンの人たちと同じ文化的遺産を共有してるかって言われればちょっと違うかな」と言ってて、考えてみたら当たり前のことなんだけど、「確かに~」って妙に納得したのです。
もちろんどちらのほうが苦しみが大きいとか、どっちが真のアフリカ人か、とかそういう価値判断をするつもりは全くない。大事なのは、日本にいたら注意を払うこともなかったであろうアイデンティティ、歴史、政治のイシューに気付かされたこと。
そして、映画のなかで一番印象強いのは、植民地主義に対する力強い風刺。
とりあえずこれだけ貼りつけておきます。
マーベル映画だけあって、アクション映画としても十分に楽しめるけど、やっぱりこの映画で語られてる特殊な歴史的文化的コンテクスト(分脈)に普段から慣れ親しんでない日本人にはそこまでヒットしないかなー、と考えてます。
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