2016年9月1日木曜日

「知の消費者」から「知の生産者」へ の巻

インターナショナルスチューデンツ・オリエンテーション最後の日。
昨日から今日にかけて、在校生も続々とキャンパスに戻り始め、静かだったカフェテリアもかなりガヤガヤしてきた。

Dean of New Students(新入生担当部長)が、リベラルアーツカレッジで、特にアマースト大学で学ぶとはどういことかについて話してくれた。


そもそもリベラルアーツカレッジをごく簡単に説明すれば、自然科学(生物、物理、情報科学など)、人文科学(歴史、哲学、文学など)、社会科学(政治、経済、人類学、法など)の3つの学問分野を、学際的に学ぶ四年制大学である。入学時にはメジャー(専攻)を定めず、多くの場合3年生になるときに「メジャー選択」を行う。アマースト大学には、American Studies から Theater and Dance、そしてPhysics and Astronomyまで、38のメジャーがある(詳しくは、https://www.amherst.edu/academiclife/departments/node/214534をご参照ください)。
リベラルアーツには古代ギリシャにまで遡る非常に長い歴史があるのだが、ここでは割愛する。


さて、本題に戻して、リベラルアーツカレッジで学ぶとはどういうことなのか。
まず、授業選択に制限がない。アマースト大学は必修科目もない。だから、コンピュータサイエンスを学びつつ、西洋美術史も取れる。
第二に、広く学ぶということは、専門的で深い知識を身に付けるのはなかなか難しい。従って、リベラルアーツカレッジを卒業した学生は、大学院に進んで自分の専門についてより深く学ぶことが多い。現に、アマースト大学の卒業生のうち95%は、卒業後5年以内に大学院に進学する。
第三に、少人数制クラスも大きな特徴だろう。アマースト大学の一クラスの平均人数は15人だし、ICUでも大きいクラスで60人ほど、小さければ生徒が2人、ということもあった。全校生徒数もかなり少ない(アマースト大学は1800人、ICUは2400人)。生徒と教授の距離も近く、コーヒーを飲みながら雑談したり、キャンパス内に住んでいる教授のホームパーティに招かれたりもする。


そんな中でも、アマースト大学の特徴は、生徒に批判的思考力を身につけさせ、とにかく膨大な量を書かせることである。読む量もハンパないが、書く量はとても多い。そこには、学生が卒業するころには、「知の消費者」から「知の生産者」になっていてほしい、というアマースト大学の狙いがある。

つまり、既存の理論や他人の考えのパッチワークではなく、自分の考えや視点を、説得力のある形で提示する力を身につけさせたいのである。そのためには、これまで当たり前だと思っていたことを再度検証したり、主流の考えに自分なりの新たな視点を加えてみたりなど、独自の手法と知的努力が必要とされる。
そして、このプロセスは創造的で面白い一方、時にはとてもストレスフルだから、ライティングセンター(*)やスチューデンツオフィス(いわゆる教務)、そしてカウンセリングセンターまで、充実したリソースが学業だけでなく、生活面や精神面で生徒のサポートをする。
まさに、全校を挙げて「知の生産者」の育成に全力を注いでいるのだ。


なんだか大変なところに来てしまったなあ、とつくづく感じる。
授業が始まったら毎日死に物狂いだろうなあ。




*ライティングセンターとは、専門のスタッフがライティングに関する疑問に答えてくれるところである。英語を母語とする学生も多く利用する。アマースト大学のライティングセンターは、ドラフトの文法・語彙チェックだけでなく、レポートの中身の構成、引用の仕方、図表の効果的な使い方、そしてプレゼンの仕方まで、本当に何から何までサポートしてくれる。
 


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